「や、巫寿。恵衣も久しぶり。元気にしてた? 変わったことはない?」
二人も行くよ、と手招きされ堤防の階段を降りて行く。
「元気です。社の皆さんも良くしてくださって────あ」
「あ?」
「あ、いえ。何も」
薫先生にとってわくたかむの社の話はあんまり聞いていて気分がいいものじゃないはずだ。
私が不自然に口を止めた理由に気付いたのか、恵衣くんは呆れたように小さく息を吐いた。
「恵衣はどう?」
「はい。特段何も起きてません。こいつの周りも静かですよ」
「良かった。百さんにもくれぐれもよろしくって伝えてあるんだけど、やっぱり学校外だとかむくらの神職の目が届かないからね」
元気にしてた?ってそういう事だったの?
何も考えずに答えてしまったことが少し恥ずかしくて俯く。
「引き続き巫寿のことをよろしく頼むね。でもかむくらの神職も定期的に社の周辺は見回っているし、しっかり実習に集中して研鑽に励むこと」
はい、とひとつ頷けば薫先生はケラケラ笑って「俺先生っぽいこと言ってる〜」と肩を震わせる。
先生っぽいじゃなくて先生なんですけどね。
「わくたかむの社って都心にも割と近いし、遊びに行くにも便利でしょ? せっかく学校の外なんだし、恵衣も勉強ばっかしてないでいっぱい遊びなよ〜」



