そして三十分後、堤防の上に並んで座り雑談しながら"監督役"を待っていた私たちは、飛行機が空気抵抗を受けるような轟音が遠くから聞こえてくるのに気がついた。
空を見上げてきょろきょろしていると、東の空から猛スピードで近づいてくる白い点を見付ける。
白い点は徐々に大きくなっていく。点ではなくそれが四本足の何かだと判明した直後、体が吹き飛ばされそうなほどの暴風と共に白い何かが私たちの頭上で急ブレーキをかけた。
うわあ、とみんなの悲鳴が上がる。咄嗟に頭を守ってその場で小さくなった。
「あはは。おおよそこんな事だろうとは思ったけど、ホント勘弁してよ。俺、風呂入ってたのに」
着地音とともに聞こえたよく知った声に顔を上げる。
普段の神職姿とは違い、寝巻きのスウェットに慌ててダウンだけ羽織って飛び出してきたような姿で、髪型もいつもよりややラフな感じの薫先生が呆れた顔で立っていた。
よっ、と立ち上がった亀世さんがニヤリと笑う。
「その割には大急ぎで来たんだな、管狐まで使って。ご苦労さん」
「もー、ホントだよ。亀世が状況をちゃんと教えてくれないから、社の禰宜頭にまで電話しちゃったんだからね。後で謝罪の連絡いれなきゃじゃん」
どうやら亀世さんの情報不足すぎる連絡により大慌てで社へ確認を入れたらしい。



