「辰巳が行方不明になった当時、メディアが神隠しだ呪いだって騒いだせいでこの街にマスコミが押しかけたんだ。校長はそれ以降、目に見えないものを毛嫌いするようになって。校長はこの街の自治会会長でもあるから、今回のことを誰かに相談すればすぐにその話は校長の耳にも届く。そうしたら僕は」


その先の言葉はなんとなく想像がついた。結局最後は保身なのか。

込み上げてくる呆れと嫌悪に顔を顰めた。

やっと当時の状況が鮮明に見えてきた。それで「ここでは言えない話」と言って私たちをこの家に招き入れたわけだ。


「僕、思うんだ。辰巳は行方不明になったんじゃなくて、自分の意思でここから消えたんじゃないかって。それぐらいあの時の辰巳には居場所がなかったと思うから」


同情の色が乗った声色に眉を顰める。

そうなるようにしたのはあなたたちなのに。


「僕が見た辰巳は、僕らを恨んで化けて出たのかな……? 僕を呪うために? だとしたら僕はどうしたらいい!?」


ため息をついた聖仁さんが口を開く。


「突き放すような言い方で申し訳ありませんが、それは僕たちにも分かりませんよ。一応その線でも捜査はしてみますが、答えを知っているのは陽太くんだけなので。もしご自身に呪いの被害が出た場合は近隣の社に相談してください」


聖仁さんの言葉は冷たいように聞こえるけれど、実際に私たちができることといえばその程度だ。

陽太くんが現れたと言っても祥吾先生の幻覚かもしれないし、なぜ今になってその姿で現れたのかなんて分からない。