その日、祥吾先生は先程挙がった三人組に命じられ、陽太くんが乗っていないことを知っていながら先生には全員乗車したと報告したらしい。

つまり陽太くんは校外学習中に行方不明になった可能性が高いということだ。


「僕が点呼で嘘をついたことと、先生がちゃんと点呼を取らなかったこと。いじめがあったこと、いじめを黙認していたこと助長していたこと。みんながお互いに秘密を握りあってるから、これまでずっと黙ってたんだ」


きつくかみ締めた奥歯がギリっと音を立てた。

あまりにも浅ましく、愚かで、人間の醜さを凝縮したような部分を目の当たりにして目眩すら感じる。

学校だけじゃない。友達も、先生も、家族でさえも。

陽太くんの味方はこの街にはいなかったんだ。どれだけ孤独でどれだけ身が裂かれるような思いを抱きながら毎日を送っていたのだろうか。


「話を戻すと、つまり辰巳陽太は家に帰る途中で道に迷い、その後行方不明になった可能性が高いということですね」


恵衣くんの淡々とした物言いに、少しだけ冷静さを取り戻す。小さく息を吐き出し、握りしめていた手の力を抜いた。

今熱くなっちゃ駄目だ。

どんな酷いことをしたとはいえ、これまでずっと隠していたことを私たちに打ち明けてくれた。

この機を逃せば事件はもうきっと解決できない。有力な情報は全て聞き出さなければ。