重苦しい沈黙、そして祥吾先生は震える喉で息を吐いた。
「……校長が、言ってたよね。あの日、バスに乗る前、学級委員長が点呼をとって教師に報告したって。中学二年、辰巳と僕は同じクラスだった」
血の気が引いた顔で振り返る。怯えた目で私たちを見下ろした。
「当時の学級委員長は、僕だ」
短く息を飲んだ。
怯えと動揺と後悔に染った瞳は、激しく左右に揺れながら許しを乞うように私たちを必死に捉える。
誰かが生唾を飲み込む音がした。恐ろしい核心に触れる直前のような張り詰めた緊張が身体にまとわりつく。
最後に陽太くんの姿が確認されたのは例の山の中腹付近、時間は帰りのバスが山を発つ直前頃だ。そして当時の担任は点呼をとっておらず、当時の学級委員長が代わりに学生たちの点呼をとった。
手に汗が滲む。怯えるその目をじっと見つめ返し静かに口を開いた。
「帰りのバスに────陽太くんは乗っていましたか」
答えを聞くよりも先にその表情でわかった。
「辰巳は……乗っていなかった」
どうして、と責める言葉が喉まででかかったけれど言えなかった。祥吾先生の顔を見れば、自分の意思でそうした訳ではないということが分かったからだ。



