「胡散臭いだなんて思わないよ。僕は元々大学で民俗学を専攻してたんだ。ある程度は理解があるつもりだよ」
お盆をテーブルの上に置いた祥吾先生は本棚から図鑑のように厚みのある大きな本を一冊引き出した。
ほら、と私たちにそれを掲げる。表紙には「百鬼夜行絵巻」と書かれている。私たちが教科書として使っている絵巻物の現代語訳版だ。
「校長のことは僕から謝らせて欲しい。この後説明するけど、訳あってそういう目に見えないものや超常現象の類を毛嫌いしてるんだよ」
「だからあの場では話せないと?」
恵衣くんの問いかけに曖昧な表情を浮かべた祥吾先生は、本をパタンと閉じて棚に戻すと、今度は別の本を引っ張り出した。
丁寧に厚紙のケースに入ったそれを引き出す。紺色の重厚な装丁に箔押しで「××中学校 第〇期生」とある。
私たちが囲うテーブルの真ん中にそれを置いた先生。
ページを開くと制服姿の子供たちの写真がずらりと並んでいる。卒業アルバムだ。
「これは……証明写真ですか?」
「あんた変なコレクションしてるんだな」
私以外のみんなはそれがなんなのかピンときていないしい。
それもそうか。神修は一度入学すれば専科を卒業する14年後まで卒業という概念がない。
在籍していた学生の思い出とかをまとめた写真アルバムです、と解説を添える。



