言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


「なんなんだねその態度は。大人には敬語を使いなさい」

「自分のこと棚に上げて何言ってんだよ。あんたに言われたかないね」


亀世さんもなかなか攻撃的な姿勢で、侮辱されたことを怒っているのがヒシヒシと伝わってくる。

はん、と鼻で笑って「それでどうなんだ」と続けた。


「……タツキはもともと問題児だった。成績も悪く協調性もない。"親が親なら"とはよく言ったもんだよ」


陽太くんのお母さんのことを言っているのだろう。確かに陽太くんのお母さんは落ち着いた感じの人ではなかったし、引っかかる部分はあるけれど、そんな言い方はあまりにも酷い。

手のひらを強く握る。


「先生自身が感じたり気づいたことは? 当日は様子がおかしかったとか、数日前からどこか人が変わったような行動をとるようになったとか」

「だからそんな何十年も前のことを事細かに覚えてるわけがないだろ!」

「それでも何か心当たりはありませんか? 引っかかった事や、些細なことでいいんです」


食い下がる聖仁さんに、校長先生は勢いよく立ち上がった。


「いい加減にしてくれ! 私は関係ないんだよ!」


敵意をむき出しにした目で私たちを睨みつけると、振り返ることもなく大股で応接室を出ていった。