バスで20分ほど揺られたところに、陽太くんが通っていた中学校があった。陽太くんは毎日歩いて通学していたようなので、帰りはその通学路を歩いてみる予定だ。
数年前に耐震工事と合わせて四階建ての校舎の壁は塗り直されたらしく、街の廃れた雰囲気とはちがってどことなく明るい雰囲気があった。
今日は創立記念日と聞いているので重そうな深緑色の校門はきっちりと閉まっている。門の奥には両側が花壇になった十段の階段があり、その奥には屋根に「元気な挨拶を心がけよう」と書かれたスローガンが掲げられた学生玄関にがある。
校門脇には小さな扉があって、インターフォンが設置されていた。迷うことなくそれを押した聖仁さん。「はい、伺います」とすぐに返事があって、数分もしないうちに学生玄関から二人の男性が小走りで出てきた。
一人は老年の男性だった。紺色のスーツを身に付けており、ムッと唇を結んだ表情からどことなく厳しそうな性格が伺える。
もう一人は三十代くらいの男性だ。こちらはスポーツブランドのジャージにスニーカーという服装で、私が通っていた中学の先生たちの服装によく似ている。
「初めまして。お休みの日にすみません。先日お電話差し上げました榊と申します」
代表して聖仁さんが頭を下げ、私たちもそれに続いてお辞儀をする。
私たちを見て怪訝な顔をした男性たち。すぐに老年の男性が「ご案内して差し上げなさい」ともう一人に向かって声をかける。
来客用の玄関に案内された私たちは校舎の中に足を踏み入れた。



