今日も天気は生憎の曇り空で、今朝から厳しい風が吹き抜けていた。
再び陽太くんの地元に降り立った私たち。相変わらず街の景色はどこかグレーがかって陰鬱としていて街ゆく人は少ない。
駅前の屋根が着いたバス停のベンチに並んで座って次のバスを待つ。
校章が入った紺色のブレザーに学校指定の長袖ポロシャツ、滅多に履かないスラックスを身に付けた皆はここなしか浮かれた顔だ。
同じく私と亀世さんもブレザーと同じ色のスカートを履いて、首元には赤い紐のリボンを結んでいる。これから伺う中学校の制服だ。
前にもこんなことがあったな、と一年前を思い出す。去年の神社実習でも、ある高校の内部調査をする際に高校指定の制服を来て来校するように指示があった。
「でも俺が中学生の制服ってちょっとキツくないかな? 三歳も歳偽ってるんだけど」
上まできっちりボタンをとめた襟元を苦しそうに引っ張った聖仁さん。
「去年まで狩衣着てたやつが何言ってんだよ」
「子供服……確かにそうだけどさ」
亀世さんの鋭いツッコミに苦笑いを浮べる。
聖仁さんは初等部の頃から「神話舞」と呼ばれる開門祭で催される神楽の舞台に、学生代表として参加している。
去年もまねきの社の御祭神に使える神、萬知鳴徳尊役を務めた。容姿端麗で優しい風貌の聖仁さんにはピッタリの役どころなのだけれど、萬知鳴徳尊は少年神で五歳児のお姿をされているだけあって衣装も子供服の作りになっている。



