「そっちはどうなの? 陽太くんだっけ、行方不明事件の捜査」
私と泰紀くんは目を合わせて苦笑いを浮べる。
「実は私達もあまり思うように進んでないんだよね。当時の記録が少なすぎて、もう一度一から再調査してるところなんだ」
「なんせタイミング悪く全部丸焦げになったからな」
ははっと笑った泰紀くん。笑えるようで笑いない絶妙なジョークだ。
あしたもう一度陽太くんの地元に行く予定だ。通っていた中学校の先生にアポイントが取れたので、当時から在職している先生に話をきけることになっている。
「よし、じゃあそろそろ先輩たちに声掛けて出発しようか」
嘉正くんが弾みをつけた立ち上がる。みんなのっそりと起き上がり固くなったおしりを叩いた。
太陽が傾き始め、空にうっすらとした橙色の幕がかかった。
陽太くんもいなくなる直前に、この空を眺めたんだろうか。



