調査チームが組まれて十数年、未だ突如として現れた最強の妖ということしか分かっていない。きっと神職さまたちが必死に頭を悩ませてたどり着いた仮説なのだろう。


「でも鬼門が生まれるのは大災害が発生した直後が通説だろ。その当時災害が発生した記録は何一つ残ってないはずだ」


へぇ、とたまらず相槌を打つと、恵衣くんがまた呆れたような顔で私を見た。

だってしょうがないじゃん。恐らくみんなは初等部か中等部で学ぶ基礎知識なのだろうけれど、私にはその期間がない。そもそも鬼門について授業で触れられることなんて滅多にないので、自分で調べようとも思わなかった。


「鬼門はもともと自然発生するものなんだよ。自然災害なんかで地上の呪が一箇所に凝縮された時、歪みが生まれて鬼脈への入口が開く。そこに専門の神職さまが鳥居を建てて神職が管理してんだよ」

「僕も実物は見たことないけど、ブラックホールみたいなのがブワッと現れるらしいよ」


へぇぇ、とこれまた深く頷く。

何となくずっと昔から姿かたちを変えずにあるものだと思っていたから、そんな風に出現するなんてなんだか不思議な感じだ。

となるとやはり三つめの説が一番現実的な気がするけれど。


「自然発生するものだから常にその"専門の神職さま"が見張ってるけど、残念ながらこの山で発生した報告は当時上がってきてなかったんだよねぇ……」


嘉正くんがはぁと息を吐いて空を見上げた。

ということはつまり、三つ目の説が一番ない可能性が高いということか。

空亡の調査はかなり行き詰っているようだ。