なるほど、と深く頷く。

鬼門は神職によって決められたタイミングで開閉される。もし鬼門を通っていれば神職が気付いているはずだ。

けれど鬼門を通った履歴もなければ、鬼門と出火の中心点の間にも残穢がない。つまり理論上では、移動もせずにその場にポッと現れたということになる。


「でも現世で暮らしていて、結婚して子供を産む妖もいるよね? 空亡もそうやって生まれたんじゃないの?」


浮上した疑問をあまりよく考えずに口にすると、一斉にみんながブハッと吹き出す。あの恵衣くんも顔を背けくつくつと肩を震わせている。

私そんなにおかしなこと言った……?


「た、確かにそういう考え方もあるね。ただ巫寿の話だと、この世に空亡が三体存在することになっちゃうよ。そうなると世界はとっくに滅んでるんじゃないかな」


笑いすぎて目尻に涙を浮かべた嘉正くん。

やっと皆が笑っている意味を理解し、ボボボと顔が熱くなる。

嘉正くんの言う通りだ。空亡が三体もいれば、私が産まれるよりも前にこの世界はとっくに滅びていたに違いない。

熱くなった頬を手のひらで仰ぐ。


「だから調査チームは今三つの仮説で調べてるんだよね。空亡が空から降ってきた説、地中から這い上がってきた説、出火地点に一時的に(ひず)みが生まれて鬼門ができた説」


神職さまたちが必死に考えて導き出した答えなのだろうけれど、前二つが非現実的というか……。


「なんだそのアホらしい説は。可能性があるなら三つ目だろう」


鼻を鳴らした恵衣くんに、来光くんは深くため息を吐いた。


「僕らだってそう思ってるよ。でもそれくらい手がかりがないってこと」