残穢の性質?

初めて聞いたワードに首を傾げた。


「体臭みたいなもんだ。人によって甘い匂いとか渋い匂いとかあんだろ。それ」


会話を遮らない程度の声量でボソッと教えてくれた恵衣くん。

恵衣くんって、習ったことをもう一度聞いたらめちゃくちゃ怒るけれど、知らないことを聞く時は分かりやすく丁寧に教えてくれるんだよなぁ。


つまり残穢の性質が前例にないものだったこととふくらの社がよって襲撃されたことで、山火事を起こしたのが空亡だと発覚したわけか。


「不可解な点その二は、残穢の発生源が出火の中心点でしか感知できなかったってこと」


二本指を立てた嘉正くん。

妙だな、と呟いたのは私たちのチームで恵衣くんだけだった。ちんぷんかんぷんな私と泰紀くんに、すかさず説明が入る。


「妖ってどうやって現世に来る? 巫寿」

「え? どうって……幽世から鬼門を通って現世にくるんだよね?」


あまりにも初歩的な質問に、少し不安になりながら答える。


「そ。妖は鬼門を通って現世に来るしかない。その鬼門は神職によって管理統治されていて、この山の近くにも鬼門のある社は三箇所ほど存在する。だからもし空亡が鬼門を通ってこちらに来る場合、社によって空亡が鬼門を通った履歴が残っているはずだし、鬼門から出火の中心点まで移動した際の残穢が残っているはずなんだ」