「発生時はそんなに妖力が強かったわけじゃないみたい。だから最初は怪し火を使う妖力の強い妖が現れた程度にしか思っていなかったんだって。でも調べていくうちに不可解な点が多いことと、ふくらの社が襲撃されてそれが空亡の仕業たって分かったらしい」


不可解な点?と聞き返す。

来光くんはひとつ頷き続けた。


「妖って僕らみたいに力をコントロールする術を学校でちゃんと勉強する訳じゃないから、どんな妖でも少しずつ妖力が漏れるってのは授業で習ったよね?」


「うん」と私が頷き、「うーん」と首を捻った泰紀くん。恵衣くんが虫けらでも見るような目で凝視し、長いため息がよく響く。


鬼市(きいち)くんや信乃(しの)くんのような神修に通っている妖は専門的に学ぶため、自分の意思で妖力を引っ込めたり使ったりすることができるけれど、それ以外の妖たちは基本的にその親や一族の族長が子供たちへ教えられる。

そうするとやはり専門的に学ぶわけではないので、どんな妖でも少しずつ妖力が漏れてしまうらしい。漏れた妖力は残穢となって溜まっていき、稀にそれが物に宿ることで呪物になったりもする。

その空気中に溜まった残穢を祓うのも神職の仕事のひとつだ。


「……ったく、泰紀はあとで誰かに聞いて。とにかくその残穢が確認できなかったから、犯人はあやかし一族の族長レベルだと判断して調査したけど、そもそも残穢の性質がどの妖にも合致しなかったんだって」