女性で賑わう店内におっかなびっくりといった様子で足を踏み入れた恵衣くんの横顔に思わず笑いそうになりながら、私も店内を物色する。
かむくらの屯所のお母さんの部屋も、色んな可愛い雑貨がたくさん置いてあったのを思い出す。
昔から花柄や和雑貨が好きで色んな小物をお小遣いでせっせと集めてきたけれど、その趣味はお母さん譲りだったようだ。
可愛い〜、と思わずため息を零しながら歩いていると髪留めのコーナーに目が留る。精巧なガラス細工でできた梅や桜、桃の花が髪紐に括り付けられている。繊細な花びらが光を受けて、朝露に濡れたようにきらりと輝いている。
たまらず手に取る。一目惚れだ。買って帰ることは即決だった。
10分近くその場で佇んで居ると、怪訝に思ったのか恵衣くんが隣に立つ。
「恵衣くん」
「決まったのか。何も買わないならもう出るぞ」
「あ、待って。どれにしようか悩んでて」
私が指さした先に視線を向ける。梅、桜、桃の花と三種類並んだ髪紐を見比べる。
恵衣くんは男の子だし、ピンと来ないか。
うちのお兄ちゃんも「何が違うの? まぁどれも巫寿によく似合うから全部買ってあげるよ」と、いつも的外れで参考にならない意見をくれる。
じっと見比べる恵衣くんに「やっぱり今度また買いに来るよ」と言おうとしたその時、恵衣くんは右端の一つを手に取った。



