瑞祥さんおすすめなだけあって、定食屋は昼前にもかかわらず既に列ができていた。
別の店にする?と聞こうとしたけれど、私が口を開くよりも先に最後尾に並んだ恵衣くん。意外な行動にまたもや目を丸くする。
恵衣くんなら"飯を食うためだけに並ぶなんて非効率的だ"なんてこと言いそうなのに。
本当に帰ってから特大の文句を言われるんじゃないだろうか。それなら今小出しにして言って欲しいのだけれど。
「良ければご覧ください」と店員がメニュー表を持ってきた。礼を言って受け取った恵衣くんが「ん」と私にそれを差し出す。
「あ、ありがとう。恵衣くんは見ないの?」
「角煮が美味いんだろ」
「……恵衣くんって人のおすすめとかちゃんと
信じるんだね」
「お前今自分がどれだけ失礼なこと言ってるか自覚あるのか」
思わずポロッと盛れた本音に慌てて口を塞いだ。
回転率がいいのか10分と待たずに店内に入った。結局私も角煮定食を選び、お冷を持ってきた店員さんに恵衣くんが「角煮定食ふたつお願いします」とすかさず注文する。
なんというか……スマートだ。
上品に手を拭いた恵衣くんはお冷の水を一口飲んで、ちらりと私に目を向けた。
「……なんだよその顔」
怪訝な顔した恵衣くんに小さく笑いながら首を振る。
思えば恵衣くんと休みの日に一緒に遊んだのはこれが初めてだ。休みの日はこんな感じなんだなぁ、と初めて知った一面に思わず頬が緩む。



