日中だけれど今日が休日なのもあって、鬼脈は沢山の人と妖で賑わっていた。


「恵衣くんお待たせ。ごめんね、お会計混んでて」


出入口で待っていた恵衣くんに小走りで駆け寄り謝る。文句を頂戴するかと身構えたけれど特に何も言わず、ひとつ頷き「次行くぞ」と店の外に出た。

数時間前に鬼脈に入った私たち。

恵衣くん付き添いの元、盛福ちゃんと玉珠ちゃんに頼まれた買い物リストを着実にクリアしていく。


「他にもまだあるんだろ。先に飯にするぞ」

「あ、じゃあ瑞祥さんにオススメしてもらった定食屋でもいい? 角煮定食が美味しいんだって」

「場所わかんのか」

「うん、住所もらったから」


買い物袋を片手に寄せてポッケからスマホを取り出そうとモゾモゾしていると、恵衣くんは無言で私の買い物袋を取り上げる。

もしかして気を遣って持ってくれた……?


「あ、ありがとう」

「早く調べろ。重い」


慌ててスマホで住所を出した。電柱に書かれた住所と照らし合わせると、すぐ近くにあるらしい。

この道真っ直ぐで、歩いて五分くらいだと思う。

そう伝えると、また無言でひとつ頷い恵衣くんは荷物を持ったまま歩き出す。

慌てて「自分で持つよ!」と手を差し出せば、一瞥して無視される。どうやら店まで持ってくれるつもりみたいだ。


嬉しいしありがたいしとても助かるのだけれど、文句もなく無言でついてきてくれたり荷物を持ってくれたり、普段の恵衣くんなら絶対に有り得ない好意がこうも続くと少し不気味というか……かなり怖いのだけれど。

帰ったらとんでもなく長い文句を言われるんだろうか、なんて不謹慎なことを考え頭を振った。