「俺らが探って出てくる程度なら、もうとっくに当時の神職さまたちが発見しているかもしれないけど……私怨による呪術の可能性もありそうな気がしてきたんだよね」


陽太くんが当時どういう状況に置かれていたのだろう。もし姿をくらましたいと思うくらいの強い負の感情を抱いていたとしたら。

姿をくらます方法はいくらでもある。姿を消す呪い、周りから見えなくする呪い、もしくはなんらかの呪いが失敗してその反動で自身の身に何かあったか。


「生前の陽太くんの周辺を、もう少し調べてもいいのかもしれないね」


聖仁さんが独り言のように呟く。みんなはどこか暗い顔でひとつ頷いた。

古びたアパートを思い出す。陽太くんの家の窓柵に、引っ掛けられた傘は二本しか無かった。