幼い頃に両親亡くしお兄ちゃんとふたりで暮らしてきた私。たまに寂しく思う時はあったけれど、お兄ちゃんのおかげでなに不自由なく暮らしていた。しかし約二年前の中学三年生の冬、私は魑魅と呼ばれる妖に襲われた。
魑魅は非常に危険な妖で私は為す術なく、今にも殺されそうになっていたところを助けてくれたのが、私とお兄ちゃんの後見人を名乗る両親の旧友神母坂禄輪さんだ。
怪異や妖とは完全に無縁な世界で生きてきた私に、禄輪さんは両親のことや彼がいる世界のことを教えてくれた。
そして私には口した言葉がその言葉通りの力を宿す言霊の力を持っているということ、母から受け継いだ授力と呼ばれる第三の力があることを聞かされた。
力のことや両親のこと、自分自身のことを知るべく禄輪さんの勧めで神役修詞高等学校に進学した私。そこは私と同じように言霊の力をもつ子供たちが巫女、宮司になるべく研鑽を重ねる学校だった。
入学早々両親を殺害した大妖怪空亡の身体の一部が封印されている祠を暴こうとした神職と戦ったり、学校中で流行った原因不明の病を突き止めたり────と、クラスメイトたちと大奮闘の日々だった。
そんな日々の中で私は神々廻芽と知り合った。片方の目を眼帯で隠したその人は、私たちの学級担任である神々廻薫先生の双子のお兄さんで、薫先生とは言霊の呪と言祝ぎを分けた存在だった。
そして神々廻芽は十数年前に起きた空亡戦において、神職たちを管理統括する機関である日本神社本庁と生家のわくたかむの社を半壊まで追いやり逃亡した。



