クリーニング店に衣装を預けると、仕上がりは閉店間際頃になると言われた。今から菓瑞のあるあきる野市まで行けば、恐らくそれくらいになるので丁度いい。

よろしくお願いします、と深々頭を下げて店を出た。

それにしてもあきる野市のお店になんの用事だろうか?

わくたかむの社は西日本最大級のお社なので、全国各地から御札やお守りの依頼がくるけれど、どれも初穂料を頂いたあと郵送でお送りするので、神職がわざわざ届けることはない。

となると権宮司の私的な用事だろうか? でもそうなると部下にお使いを頼んだりしないだろうし。なにより最初に頼まれていた禰宜がとても嫌そうな顔をしていたのが引っかかる。

つまり禰宜はどうして権宮司がおつかいを頼んだのかを知っていて嫌がっているということだ。

膝の上に乗せた風呂敷から、柔らかい紙の箱の質感が伝わってくる。お高い洋菓子が詰められていそうな箱っぽい。

和菓子屋さんにお菓子を届けるの?

やはりよく分からない。


「おい、人様に渡すものをこねくりまわすな」


風呂敷の中身が気になってあれやこれやといじっていたらしい。

恵衣くんに睨まれて慌てて膝の上に戻す。


「次の乗換駅で飯食うぞ」

「そうだね。そういえば禰宜、好きなだけ食べていいって言ってたよ」


はぁ、と息を吐いた恵衣くんは車窓の景色に目を向ける。


「ファストフードのチェーン店だぞ。微塵もありがたみがない」


確かに、と小さく吹き出した。