ダンボール箱の上に社紋の入った紫色の風呂敷を載せたのは、百さんと同期の禰宜だった。
まるで嫌なものでも押し付けるように私達にそれを渡した禰宜は、返事を聞くよりも先に脱兎のごとく逃げていく。
残された風呂敷を見つめる。
ぽこん、とトークアプリにメッセージが届いた通知が届く。ポケットから探り出して開けた。恵衣くんが私の肩から覗き込む。
「は? あきる野ってこっから3時間はかかるぞ」
「わぁ〜……見事に押し付けられたね」
忙しいのは仕方ないけれどここから3時間となれば帰ってくる頃には夕方だ。まだお昼ご飯もまだなのに。
続けざまにハンバーガーのチェーン店で使える電子ギフトが送られてきた。
【好きに食っていいから押し付けたこと権宮司には黙っててくれ…!】
つまり権宮司に頼まれた仕事ということか。
「……行くぞ」
怖い顔をした恵衣くんが、おそらくため息を堪えた顔で歩き出す。流石に一番偉い人から頼まれた仕事は断れないらしい。
「それにしても、これってお店の名前だよね? 菓瑞ってことは和菓子屋さんかな?」
「知らん。とにかくさっさと届けて帰るぞ」
和菓子屋さんなら寄ったついでに、みんなに大福でも買って帰ろうかな。
だね、と頷きダンボールを抱え直した。



