目当ての部屋はすぐに見つかり、鬼の衣装も確保することが出来た。私達はそれぞれにダンボールを抱えて来た道を戻る。
「あの離れ、薫先生が使ってたらしい」
唐突にそう言った恵衣くん。
「え? 薫先生が?」
「子供部屋があった。薫先生の名前が入った物もあったし、間違いない」
通りで誰かが住んでいたような気配が強く残っていたんだ。私が調べた部屋も可愛らしい置物や化粧台があって、女性が使っていたような雰囲気が残っていた。
「家を出るまで、家族で住んでたのかな」
「お前……薫先生の前で絶対に言うなよ、それ」
へ?と目を点にすると恵衣くんは呆れたように息を吐いた。
「千歳狐の瓏、あいつがこれまでどんな風に過ごしてきたのか聞いたんだろ。少し考えりゃ薫先生も似たような境遇だったって気付くだろうが」
瓏くん?
妖の友達である瓏くんは「千歳狐」と呼ばれる特別な妖で、九尾の狐の夫婦から生まれる非常に妖力の強い妖だ。その妖力の強さから数百年は親元で修行をし、やがて人里に降りてくると言われている。
けれど両親を殺され、自身も誘拐された瓏くんはまだ力の制御が不完全だったため、結果沢山の人を傷付けてしまった。
妖狐の信田妻一族に保護されてからも、力の暴走は度々あって、里の人たちからは冷遇されていたらしい。



