鎮守の森を5分程度歩いたところにモグラの穴のようなぽっかりと土地が開けた場所が現れた。
そこに静かに建っているのは狭くはないけれど大きくもない平屋の木造一軒家。最低限の手入れしかされていないのか、建物の痛みが若干目立つ。
わくたかむの社の建物はどれも古びているけれど洗練された雰囲気をまとっているのに対し、この建物だけは本当にただの古びた建物という印象が強い。
離れと呼ばれていたからには、きっと昔はちゃんと「離れ」として利用されていたはずだ。
埃臭い玄関で靴を脱いで中に入る。やはり人が生活している感じはなく、本当に今はただの倉庫替わりなのだろう。
「どこの部屋って?」
「えっと、たしか入って手前から二番目……あれ三番目? 通路を挟んで右もしくは左……」
聞いたはずの記憶が揺らぐ。途端、恵衣くんがわかりやすく顔を歪めた。
おっとこれは。
深く長いため息、そして。
「バカなのかお前」
苦笑いで肩をすくめる。
ほらやっぱり言った。
「お前は右の部屋を見ろ。俺は左の部屋を探す」
それだけ言うとそそくさと歩いていく恵衣くん。
口さえ悪くなければ恵衣くんも聖仁さんと同じくらい優秀なんだけどな。
まあ今回は聞き逃した私が悪いんだけれど。
気合いを入れ直して手前の部屋をスパンと開いた。



