だから昨日まであれほど確認しろとッ、おい君の担当はそこじゃないだろ、誰だ福豆をひっくり返した奴はー!
禰宜頭の悲鳴に近い怒声が廊下を駆け抜けていく。
「大人でもキャパることあるんだな」
遠くなっていく背中に泰紀くんが呟く。
「むしろこんなに大きな社を一人でまとめてるだけでも凄いよ。ほら皆、福豆詰めいくよ。恵衣と巫寿ちゃんは神職さまに衣装のありか聞いておいで」
聖仁さんの一声でみんなはゾロゾロと動き出した。
走り回っている神職さまを何とか捕まえて衣装の在処を尋ねると、年に一度しか使わない備品はいつもの倉庫ではなく今は使われていない離れに保管されているのだとか。
離れなんてあったんだ。
「おい。少し遠いが営業時間内に仕上げてくれるクリーニング屋が見つかった」
私が在処を尋ねている間に、クリーニング屋の目星をつけてくれたらしい。さすが恵衣くんだ。
「鬼の衣装は離れにあるんだって。恵衣くん場所知ってる?」
「鎮守の森をちょっと入った本殿から一番遠い建物だろ」
急ぐぞ、と走り出した恵衣くんの背中を追いかけた。



