落ち葉を踏みしめながら緩い登山道を登っていく。


「そこまで大きな山じゃないから、歩いて二時間程度で頂上まで登れるんだって。この辺の学校じゃ定番の遠足コースだったみたいだよ」


タブレットを操りながら聖仁さんが辺りを見回した。

山火事からもう十数年近く経っているので、火災の跡はよく観察しないと見つけることができないくらい再生している。

むしろ人の手が入らなくなったからか、草木がみっちりと生い茂って生き生きしているようにすら感じる。


「今日は一旦陽太くんが最後に確認された場所と、当時のハイキングコースを辿って────って、あれ? 亀世は?」


振り返った聖仁さんが足を止めた。

え?と目を瞬かせて前後左右を確認する。ほんの少し前まで隣を歩いていたはずの亀世さんの姿がなかった。


「遅れてんじゃね? 亀世さんの体力って俺の夏休みの宿題に対するやる気と同じくらいしかないし」


つまりほぼゼロということか。

そういえば以前鶴吉さんも、似たようなことを言っていた気がする。


「探してきましょうか」


聖仁さんの隣でタブレットを覗き込んでいた恵衣くんが名乗り出るけれど聖仁さんは苦い顔で首を振る。


「山の中だし別行動はやめとこう。それにこれがあれば一発でしょ?」


やれやれと肩を竦めた聖仁さん。懐から鳥の形に切り取られた形代を取り出した。

なるほど、形代に空から探させる作戦か。

短い祝詞を唱えてフッと息をふきかけると、鳥の形代はふわりと空に舞い上がり暫くその場を旋回したあと来た道から少しそれた方角へ進み始める。


「あっちだね、よし行こう」