「──禰宜頭、提案があります」
昼休みが終わって重い溜息をつきながら奉仕を再開した私たち。少しして進捗確認に来た禰宜頭に、聖仁さんが声をかけた。
「どうした?」
「現地調査に行かせてください」
「現地調査?」
現地調査?と私も心の中で反復する。
「当時の資料を読み込むことも大切だとは思うんですが、現場を見たからこそ気づけることもあると思うんです。だからいくつかピックアップした事件について、現地調査に行かせて欲しいんです」
聖仁さんは事件がまとめられたファイルを三冊ほど禰宜頭に差し出す。パラパラとそれを確認した禰宜頭は「ふむ」と顎を摩った。
「よし、いいだろう。ただ調査に行く前に必ず行動計画書を提出しなさい」
気怠げな空気が漂っていか会議室の雰囲気が明らかに変わる。光が消えたみんなの瞳に輝きが蘇った。
「はい、既に作成済みです。ということで今から行ってもいいですか?」
A4の紙を差し出した聖仁さんがにっこりと笑う。
驚きの表情を浮かべた禰宜頭はそれにざっと目を通し、呆気にとられながらひとつ頷く。
「君たちの担任から"優秀だけど問題児"と聞いていたんだが、君たちの先生はどうやらとても厳しい人なんだな」



