清らかな鈴の音色と共に目の前で真っ白な袖がはためく。ちらりと見えた顎髭をたくわえた横顔に目を見開く。
「三門! 挟むぞ!」
「はい、禄輪さん!」
その後ろから浅葱色の袴を履いた若い男性が飛び出してくる。二人は魑魅に向かって駆けだした。
「巫寿ちゃん、こっち!」
私の肩に触れたのは長い黒髪をひとつにまとめて赤い袴を身に付けた巫女の装いをした女性だった。彼女達には過去に2度ほど世話になった事がある。
「巫女のお姉さん……!」
お姉さんは女性に肩を貸して立ち上がる。私では全然持ち上げられなかったのに、と驚いていると腰を抜かす女性のお尻を頭で押し上げる二匹の白い狐の姿があった。
「ボサっとしてる暇はないぞ小娘!」
「一旦"ゆいもりの社"へ向かうよ!」
クワッと赤い口を広げた二匹の狐がそう喋る。狐が喋った!?と目を回す女性に苦笑いを浮べる。私も二年前は似たような反応だった。
はい!と答えて反対側から女性を支える。私たちは走り出した。



