言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー



社宅を出ると、表の鳥居とは反対側方面の鎮守の森を目指した。

ほとんどの神職が昼休憩は社宅か社務所で過ごすけれど、一部の人はお散歩がてら鎮守の森を歩いたりする。

鳥居側は参拝客が歩いていて、スマホを使ったりベンチを使用することができないので、外で過ごす神職のほとんどがこちら側に向かう。

社宅や社務所にはいなかったので、恐らく聖仁さんもこちら側にいるはずだ。


冬の突き刺すような寒さが昼間のまろい日光で緩和され、木々の隙間から心地よい木漏れ日が頬を照らす。

気持ちいいな、と目を細める。

ここ数日は天気が悪かったけれど、今日は久しぶりに雲が晴れた。そのおかげか外を歩く神職さまが多い。

こんにちは、と挨拶しながら聖仁さんの姿を探す。


社宅を出る前に聖仁さんに電話をかけたけれど、通話中だというアナウンスが流れて切れた。

だから恐らく聖仁さんは今。


「へぇ、そっか。そっちも任務任されたんだね。あんまり無茶しちゃダメだよ、後輩に迷惑かけないようにね」


木々の隙間から風に乗って誰かの話し声が聞こえる。

声の方に足を向けると、案の定そこには探していた背中があった。