「少なくとも13年は受け入れてないね。なんなら新卒も採ってないし。お陰様でこの歳になっても未だに雑用係だよ」
「神修の卒業生も受け入れてないんですか? ……あー、なるほど」
亀世さんが意外そうに聞き返したあと、すぐに自分で結論に辿り着いたのか納得したように頷く。
そういうこと、と少し声を低くした百さんにすぐに察しがついた。
学生の受け入れや卒業生を採用しなかったのは、恐らく神々廻芽のことがあったからだ。彼が本庁を裏切り空亡側についたことは箝口令が敷かれており、その情報を知っている人たちも厳重に管理監視されている。嬉々先生がその一人だ。
人の出入りを減らすことで情報が漏れないように対策していたのだろう。
逆に言えばここにいる人たちは全員幼少期の双子を知っており、彼らが決別するその時のことも知っているというわけだ。
つまり私の知らない彼のことを知っている。
「百さんは神々廻芽のこと、どこまでご存知なんですか?」
思わずそう尋ね、目を見開いた百さんが勢いよく私の口を塞いだ。びっくりして固まっていると、百さんはとんでもない目力で私をじっと見つめる。
「ごめん、私そろそろ行かないと。権宮司に報告上げなきゃだから。千歳おいで」
私の膝の上に座っていた千歳ちゃんを抱き上げた百さんは、「バタバタしてごめんね、君らはゆっくり食べて」と笑う。



