言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


百さん、五宮(いつみや)(もも)さんとは冬休みの間にかむくらの屯所で出会った。

彼女の三つ年上の兄の(よろず)さんと兄妹でかむくらの神職に参加しており、空亡戦当時は専科を卒業したばかりの20歳で最年少の神職として最前線で戦っていたのだとか。

今はこの界隈とは全く無縁の男性と結婚して一児の母となり、家庭を守っている。守るべきものが増えたから、今回からは最前線ではなく裏方として皆を支えていくつもりなのだと話していた。

しかし当時の武勇伝は数多く、沢山の神職さまから彼女の話を聞き、そして百さんのこの懐が深く分け隔てない面倒みの良い性格にすっかり私も惚れてしまった。

そして娘の千歳ちゃんもこの通り天使のように可愛いく人懐っこいので、屯所にいる間手が開けばひたすら遊び相手になっていた。


他のみんなも冬休みの特訓で百さんに扱かれているので顔見知りだ。唯一参加していなかった亀世さんのことを紹介する。

流れで一緒に昼食をとることになり、もちろん隣に座ってもらった。


「にしても実習生がくるって、随分久しぶりだね。私は二十歳からここにいるけど、神修の学生が実習に来ているのは初めて見たよ」

「え、そうなんですか?」


意外な事実だ。

わくたかむの社は東日本最大で歴史も長い。薫先生も実習するにはうってつけの場所だと言っていたし、毎年のように学生を受け入れていたのだと思っていた。