「──お、巫寿ちゃんじゃん。実習どう? 頑張ってる?」
昼休みになり、社宅の食堂でお昼ご飯を食べていると背後から親しげに声をかけられた。
箸を持ったまま振り返る。小さな女の子を抱いた紫袴姿の女性に目を丸くする。ベリーショートの髪型に女性の中ではしっかりとした体つき、眉を上げてにかっと笑うこの笑い方。
「百さん、千歳ちゃん!」
「久しぶり。ごめんねぇ、声かけるの遅くなって」
溌剌とした笑顔で千歳ちゃんの手を小さく振った百さん。千歳ちゃんも嬉しそうに声を上げて笑う。
「百さん、もしかしてわくたかむの社の神職さまだったんですか?」
「あれ、言ってなかった? 私ここの神職。巫寿ちゃんが実習で来るってのは聞いてたんだけど、昨日まで出張だったから声かけるの遅くなっちゃった」
そうだったんですね、とひとつ頷く。
百さんの愛娘である一歳の千歳ちゃんが、私と会ったことをちゃんと覚えてくれていたようで機嫌よく私に手を伸ばす。
「百さん百さん! 千歳ちゃん、抱っこしていいですか?」
「どーぞどーぞ。なんなら今日一日中私の代わりに抱っこしといて」
ケラケラ笑いながら千歳ちゃんを私に差し出す。両腕に抱き抱えると首筋にまだ細くて柔らかい髪の毛が触れてくすぐったい。私よりも高い体温と幼児特有の甘い匂いに頬が緩んだ。



