言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー



『この二か月間を通して君たちに任せたい仕事がある。それがこれだ』


神社実習二日目、初日は奉仕奉告祭だけで一日が終わったので本格的な奉仕は今日からだ。朝拝が終わり、私達は社務所の会議室に呼ばれた。

実習の間私たちの面倒を見てくれるらしい禰宜頭が、両手に抱えきれないほどの大量の書類やらファイルをテーブルの上にバサバサと置いた。

私達はお互いに顔を見合せ、恐る恐る自分の前にある書類に手を伸ばす。

「平成××年関東地方行方不明事件一覧」「東京都方行方不明者名簿20××年」「20××年神隠し被害者一覧」

そんな書き出しのファイルや書類に眉根を寄せる。

行方不明に神隠し、物騒な言葉が並んでいる。


現世(うつしよ)で行方不明事件が発生しているのは知っているな】

『はい。でも本庁はそれどころじゃなくて捜査に乗り出せていないんですよね』


聖仁さんの言葉にその通りだ、と禰宜頭が苦々しい顔で頷く。

本庁は今内通者の発覚や幽世で起きた戦の事後処理、黒狐(こっこ)族の調査でてんやわんやなのだと聞いている。


『そこで、本庁からわくたかむの社に関東地区から中部地方にかけての神隠し事件を調査するよう依頼があった。君たちにはその調査チームの手伝いをしてもらいたい』


神隠し事件の調査。

何か任務を任せてもらえればとぼんやり考えていたけれど、まさかの任命に胸が騒ぐ。


『君たちには過去の神隠し事件を洗い出して、関連しそうなものを私たちに報告して欲しい』