言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー



「なんというか、体良く雑用係に任命された感じだよね」


聖仁さんのその一言にみんなのため息が重なる。

神社実習が始まって一週間。まだまだ始まったばかりなのに、私たちの作業場として与えられた会議室にはやる気のないため息で溢れていた。


「福豆詰める作業の方がマシだな」


け、と顔を歪める亀世さん。

3年生の中では頭脳担当で、体を動かすことはそこまで好きじゃない亀世でさえこの様子だ。


「任務ですよ、これ」


恵衣くんが書類に目を落としながら苦い顔をする。

私や泰紀くんが同じ発言をしたら、間違いなく「馬鹿なのか? 任務なんだから黙ってやれよ」だったと思う。

それにしても、任務とはいえ1日8時間近くこの会議室に閉じ込められ書類との睨めっこを強いられると、さすがに参ってしまう。

文字を追いかける作業は目が疲れるし睡魔との戦いだし、亀世さんの言う通り手を動かす福豆の梱包作業の方がまだマシな気がする。


「聖仁さぁん……さっきから同じ行ばっか読んじまう……もう頭がおかしくなりそうだ助けてくれ……」


私たちの中では一番肉体派な泰紀くんがしおしおした顔で嘆く。


「頑張れ泰紀。あと三十分すれば昼休憩だから」


動いてねぇから腹も減らねぇよ、と泣き言を漏らす。

全くもってその通りだ。