白金に近い光が女性の体を覆った。彼女に巻き付く禍々しい色の靄を包み込み、やがて小さな光のつぶてとなって剥がれてゆく。

息を詰まらせていた女性が苦しそうに咳き込み始め、勢いよく駆け寄った。


「大丈夫ですか!?」


虚ろな目で私を見あげた女性が何とかこくりと頷く。

良かった、意識はあるみたいだ。

立てますか、と女性のに手を差し出す。身体に力が入らないのか、女性は泣きそうな顔で私を見上げ首を振った。

脇に手を差し込み引っ張りあげるけれど、私の力では支えきれずたたらを踏んだ。


「巫寿さまッ!」


眞奉の緊迫した声と共に、ザッと空気を切り裂く音が頭上に響く。顔を上げると魑魅の靄が霧散したところだった。


「眞奉手を貸して!」

「致しかねす。今私がこやつから目を離せば諸共飲み込まれます」


靄を切り裂きながら、冷静な声がそう答える。予想通りの返答に唇を噛んだ。

やっぱり私が何とかするしか───でも私に魑魅を祓えるほどの力量はない。本来なら神職数人がかりで立ち向かう敵だ。

女性を見下ろす。可哀想な程にガタガタ震えていた。無理もない、いきなりこんな状況に陥ったら誰だって怯えるに決まっている。私がそうだった。


蜘蛛が群れを成して蠢くように形を変えるそれを睨む。私たちを飲み込もうとにじり寄ってくる。


一体どうしたら────奥歯をかみ締めたその時。




「下がってなさい、巫寿ッ!」