ただ、ふとした瞬間にひどい違和感を感じる。冷水に触れた時のような背筋がゾワッとするような、気の悪い場所に足を踏み入れた時のような感覚だ。
「お前らが感じる違和感は、おそらく派閥のせいだろうな」
亀世さんがテレビを消して振り返る。
「派閥?」
「ああ。お前らはもう知ってるだろ。薫先生の言霊を分け合った双子の兄神々廻芽が空亡に組みした件は」
皆はなんとも言えない表情で頷く。
薫先生と神々廻芽は双子の兄弟だ。普通の人なら学年に一組程度は双子がいただろうしさほど珍しいとは思わないのだろうけど、私たちの世界での"双子"はとても大きな意味を持つ。
言霊の力は遺伝ではないけれど、両親が保有していれば九割の確率で子供にも受け継がれる。双子の場合でも例外はなく言霊の力は確実に子供らに現れる。
しかし、それは母親の腹の中で一つの言霊の力として宿るため、多くの場合出産時に言霊の力のふたつの要素である"言祝ぎ"と"呪"が双子のそれぞれに別れてしまう。鶴吉さん亀世さんのように例外もあるけれど、ほぼ百に近い九分九厘なのだとか。
そしてその理通り呪と言祝ぎを分けて生まれてきたのが、神々廻芽と薫先生だ。
「薫先生、子供の頃に次期宮司に選ばれてたらしいぞ」
しばらくの沈黙、そして全員の「え!?」と驚く声が揃った。



