「────やっぱりこの社、訳ありだよな?」
本格的な奉仕は明日から、ということで一通りの説明を受けたあと、順番にご飯とお風呂を頂き解散になった。
聖仁さんの提案でこれから毎晩集まってレポートを書くことになった私たちは、いちばん広い男子部屋に集合した。
黙ってレポートを書いていた泰紀くんが、いよいよ限界が来たのはクロールの息継ぎをするようにブハッと息を吐く。
よっぽど言いたいのを我慢していたらしい。
「泰紀にしてはよく我慢したね」
苦笑いをうかべた聖仁さんが肩を竦めてそう言った。
「まぁ身内の中から空亡に組みしたやつがでたってだけで、もう既に訳ありだろ」
誰かが持ってきたチップスターを頬張りながらテレビを見ていた亀世さんがふんと鼻で笑う。
正直に言えば、私も社の案内をしてもらっていた時から妙な雰囲気を感じ取っていた。
表面上はとてもちゃんとした社だ。長い年月をこの土地で奉仕してきただけあって、神職たちは礼節と規律を重んじ所作も厳格だ。
歴史の重みを背負っているだけのことはある。
かと言ってみんなが皆ロッテンマイヤーさんのように厳しいというわけでもなく、食事の際にご一緒した何名かはとてもフレンドリーに話しかけてくれた。



