神職さまは私たちを見回し、目尻の笑い皺をより一層深める。
「皆さん初めまして。わくたかむの社権宮司、扇屋真言です」
権宮司、宮司に次いで社で二番目に偉い役職だ。
慌ててガバッと頭を下げる。代表して聖仁さんが一歩前に出た。
「本日より神社実習させていただきます、神修二、三年計五名です。約二ヶ月間、ご迷惑をおかけするかと思いますがご指導ご鞭撻のほど、どうぞよろしくお願いいたします」
ゴベンタツってなんだ?
小声でそんな事を聞いてきた泰紀くんの頭を恵衣くんがグッと押し込んだ。
笑いそうになるのをグッとこらえる。こんな大事な場面で勘弁して欲しい。
「そう固くならなくていい。私達も、君たちにとって有意義な実習になるよう尽力するよ。じゃあ、まず荷物を置いたら社の中を案内しようか」
はい、と返事をして足元に置いていたボストンバッグを肩にかける。
そこで薫先生から預かっている資料があったことを思い出し、鞄の中からゴソゴソと封筒を取り出す。
「あの、真言権宮司。宮司は今どちらにいらっしゃいますか? 先生から"着いたら直ぐ宮司に渡すように"と書類を預かっていまして」
私がそう尋ねると、権宮司は一瞬目を見開き、動揺したように視線を泳がせた。気まずい沈黙が流れる。
私、何かまずい事でも言ってしまったんだろうか?



