最寄り駅から車を20分ほど走らせたところに、社はあった。
太く、重く、年月の重みにも軋まずに立つ檜の一の鳥居をくぐる。
足元から柔らかな音が立つ。喧騒の都心にあるとは思えないほど静寂に満ちていた。聞こえるのは風の通る音と、木々が葉を揺らすささやき。
この森は生きている。
何となくそんな言葉が心に浮かんだ。
木々の合間を縫うようにして参道は続く。空気は澄んで、湿り気を含んだ土と樹皮の香りがほのかに鼻をかすめた。
二の鳥居を越える。やがて視界の奥には、一国の城と見まごうほど荘厳な本殿が現れた。
深い檜皮色の屋根が、空に溶け込むように静かに広がり、軒先は長く優雅に反り上がっている。重厚でありながらしなやかで光を吸い込んだような屋根と、柔らかい木肌の柱。軒下には銅板の飾り金具が控えめに施され、空の光を淡く反射していた。
広い拝殿前の敷石は淡く白んで、踏みしめればほのかに冷たい感触が足元に伝わる。そこに立つだけで、身体から余計な音や言葉が抜けていくような不思議な浄化がある。
風が吹くと軒下の飾りが小さく揺れ、鈴の音にも似た澄んだ響きが空に溶けていった。
足を止めた。
滝に打たれるような強いエネルギーを感じ、手先がびりびりと痺れる。
皆同じように呆然と立ち尽くし、目を見開いたままただ本殿を見上げていた。



