言祝ぎの子 漆 ー国立神役修詞高等学校ー


『直近で色々ありすぎたからね、君らだけで向かわせるのは危険だと上層部が判断したんだよ。だから一二年生の各グループに三年生を一、二名混ぜることになったんだ』

なるほど、一理ある。

最近は幽世も現世も物騒な事件が多く騒がしい。神修の高等部三年は神役諸法度上では神職活動は認められていないものの、階級でいえば活動すること自体は認められている。

それに今年の三年生はとりわけ優秀なので、一二年生の保護者兼監督役として派遣するのはいい案だ。

そうして私たちのグループには聖仁さんと亀世さん、嘉正くんたちのグループには瑞祥さんと鶴吉さんが派遣されることになった。

ちなみに、出発する前のガイダンスで聖仁瑞祥カップルがみんなが呆れるほど別れを惜しんでいたのは余談だ。外であんなに堂々とイチャイチャされると目のやり場に困る。

そうして私たちはわくたかむの社をめざして出発した。


わくたかむの社はぎりぎり都心と呼ばれる場所にある。神修がある山を車で下山し、乗り換え3回の1時間程度で社の最寄り駅に到着した。


「前回がまなびの社で京都だったから、冒険感が薄いんだよなぁ」

「無駄口叩く暇があるなら、さっさと迎えの神職さまを探せ馬鹿」

「なんだよ。お前だって駅弁買うか悩んでたくせに」

「あれはお前が遅いから、なんとなく見てただけだッ!」


初っ端から言い争いを始めた泰紀くんと恵衣くんに天を仰ぐ。

まったく、恵衣くんはなんでこう相手を怒らせるような事ばかり言っちゃうのかな……。