「思えば薫先生って、結構謎が多い人だよね」
そう答えたのは聖仁さんだ。
「自分のことをあまり話したがらない人種のようだしな」
「亀世もそう思う?」
ふむ、と頷いた亀世さん。
聖仁さんに亀世さん、泰紀くん。そして隅に座って静かに本を読む恵衣くん。改めて不思議なメンバーだなとベンチに座るみんなを見渡した。
この五人が、今回わくたかむの社で一緒に神社実習を受けるメンバーだ。
『今年の君らの実習先は────わくたかむの社になったよ』
そう発表されたあと、皆はわくたかむの社を脳内マップで検索し、ぎりぎり都心と呼ばれる場所に位置することを思い出し諸手を上げて喜んだ。
『って、わくたかむの社って薫先生の実家じゃね?』
遅れてその事実に気付いた泰紀くんに、薫先生は苦笑いで頷く。
『そ、俺の実家。個人的にはおすすめはできないけど、社の歴史とか規模とかは実習先にはうってつけだから、まぁギリ当たりって感じかな』
かなり含みのいる言い方だな、と隣の恵衣くんが眉根を寄せる。
『で、わくたかむの社に行くのが、泰紀と恵衣、そして巫寿ね。残りの二人は別の社』
名前を呼ばれなかった二人が「へ?」と目を瞬かせる。
私も驚いた。前回がみんな一緒にまなびの社で実習を受けたので、今回もまたみんな揃ってお世話になるのだと思っていた。



