こうして花待ちの季節、蝶子は帝都を離れ、大天狗の山へと嫁いだ。

 その後、哉宵は山の主の座を引き継ぎ、時代が移り変わっても、古来よりの霊峰として人々から崇敬され続けた。

 霊峰の山神は「黒白(こくびゃく)様」と尊ばれ、白狐に乗った烏天狗として描かれることが多いが、一説には、黒い翼の青年と白い髪の娘の夫婦神でもあると言う。