だが汀子の誓いも虚しく、次の初雪を待たず、高階財閥は瓦解した。

 発端は、前当主の四十九日を終え、離れの解体直後に起こった本家邸宅の焼失だった。雪果ての日に雪御前の白髪をくべた竈から燃え移った炎は、乾燥した風に煽られ、敷地すべてを蹂躙し焼き尽くした。

 その後も、貿易船の不備や事故が立て続けに起こったり、歳若い女当主を侮った詐欺に巻き込まれたりと、不運が重なり、またそれが新たな不運を呼んだ。結果、莫大な負債を抱え、代替わりから一年足らずで高階一族は離散した。

 ほんの一時(いっとき)、社交界の華と持て囃された最後の当主は、外国に売り飛ばされたとも、帝都の片隅で物乞いとして通行人の袖を引いているとも噂されたが、その行方を知る者、案じる者は誰一人いなかった。