「はぁああ。もうライネルに会いたい〜」

この『青いまくら』は中の綿と一緒に最新の小型AIが搭載されていて使用者が眠っている間、特殊な電波を発信する。

その電波は睡眠中の私の脳の波形と連動し、注文の際、事前に登録しておいた見たい夢の情報をAIが学習して使用者に望み通りの夢と体験を提供してくれるのだ。

「本当に転生しちゃったと思ったわ……てゆうか、夢だけど……転生?」

私は首を捻る。

「うーん……ま、いっか」

残念ながら数学や科学といった部類が苦手な私にはその理論や自分が体験したことをうまく表現することは難しい。

「いやほんとすごいわね、キャッチコピーの『令和の推し活の最終形態』って言葉がぴったりだわ」

近年、未婚化が進み少子化が加速するのも無理ないのかもしれない。

この『青いまくら』は深く眠っている間に、使用者の望む幸せな時間を体験できることから、使用者の睡眠の質もあげ、さらにそのことによって仕事の効率やバイタリティも上昇させる効果まであるとテレビでも取り上げていたがその通りだ。

私はスマホで設定していたアラームが鳴る前にオフにする。目覚ましより1時間も早く起きたのは社会人になって初めてかもしれない。

「う〜〜〜ん」

私は思い切り伸びをする。

頭はすっきり、それでいてライネルにたっぷり癒されて最高に幸せな気分だ。

「じゃあ今日も張り切って社畜OL行ってこよ〜!」