──それからどのくらいの時間が経っただろう。

ライネルと薔薇に囲まれてキスをして、一緒に豪華な夕食を食べ、夜は朝まで抱き合って眠った。


(あれベッドの感触が違う、ような……?)

「うーん……」

私が目を開けると、そこは見慣れた部屋のベッドの上だった。

「え!」

私が飛び起きると目の前には小さなテレビに飲みかけのコーヒー、さらに『藤元海子』宛の納品書の封筒が見えた。

「あー……そうだった。もうちょっと《《あっち》》に居たかったなぁ」

私は盛大にため息を吐くと、封筒の中から中身を取り出す。

「昨日は寝るのが楽しみすぎて、ざっとしか読まなかったんだよね」

そこに書かれているのは購入したある商品についての説明とクーリングオフ期間が記されていた。

「この、幸せを呼ぶ“青いまくら”、確かにすごいわ」

私は真新しい鮮やかな青色の枕に視線を向ける。

「SNSでバズるだけあるよね! まさかこんなに自分に都合のいい夢があんなにリアリティたっぷりに見れるなんて」

そう。私は先日、SNSで大人気のこの幸せを呼ぶ『青いまくら』を思い切って自分のご褒美に購入したのだ。

値段ははっきり言って高い、このご時世に新車が変えるほどだ。でも私は運転免許を持っていないし、他にお金を使うあてもない。

それなら唯一の趣味であるロマファンの世界をもっと堪能してみたいと予約したのが半年前。

受注生産のため予約購入してから受け取ったのは昨晩のことだ。