そして数あるロマンスファンタジーの中でも絶大な人気を誇り、私が一番好きなのが『碧き瞳の王太子は初恋の令嬢を溺愛する』という小説で、そのヒロインの名前こそマリー=フランゼーテ。

(そう! 私はついに転生というものをしてしまったようなのだ!)

(それもロマファン好きが憧れてやまない)

(『碧き瞳の王太子は初恋の令嬢を溺愛する』、通称“碧き溺愛”のヒロインであるマリーに!)

(生きててよかった~~~!!)


「あぁ、神様仏様、ロマファンの女神様~本当にありがとうございます~~~」

(あ! いけないいけないっ)

私はハッとして口元を引き締めたが、私の一歩後ろをついてきているレイザが訝し気な表情をしている。

私はすぐに何ごともなかったかのようにニヤけた顔を元に戻した。

(気をつけなきゃ……すぐマリーになったことに舞い上がっちゃう)

私の両親は事故でなくなっており身寄りも仲の良い友達もいない。現実世界で私がどうなってここへ来たのかは何故だか思い出せないが、私という人間がいなくなっても問題はないはずだ。

(あ。納品伝票と在庫計算……誰かに引き継いでおけたらよかったかな)

そこまで考えてから私は首を振った。

(もう忘れましょ!! せっかく憧れてた転生ってやつをしちゃったんだから)