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私の、この世界に来る前の名前は藤元海子(ふじもとうみこ)、35歳独身。日頃は国内外の調味料を扱う小さな卸会社のしがない事務員をしている。

また海子という名前はご想像通り、海が好きだった父が安易につけた名前だ。

名づけの理由である、海のように清らかな女性になって欲しいという気持ちは嬉しいが、実際は平凡な顔で特に秀でた能力もなく、32歳の時に3年付き合っていた恋人に浮気されたうえに貸していたお金を踏み倒されて一方的に別れを告げられた。

理由は私よりも若くて可愛い彼女ができたから。

それからの私は恋愛から遠ざかった。いわゆるトラウマになったのだ。

どんなに愛し合っていたとしても現実世界の男は心変わりするんだと思い知らされた。

勿論、すべての男性がそうではないことも理解しているが、次の恋愛を探そうとも職場は既婚者しかおらず、30歳過ぎて生涯のパートナーを求めて積極的に婚活する気にはなれなかった。


そんなとき、私が出会ったのがロマンスフファンタジーの小説だ。

どの小説でもそうだが、大多数のロマンスファンタジーの世界のヒーローはヒロインを永遠に愛してくれる。

どんな困難も一緒に乗り超え、いつもそばで支えてくれ生涯ヒロインだけを見つめてくれる。

いつからか私の唯一の趣味であり癒しはスマホでロマンスファンタジーの小説を読むことになっていた。