(やっぱり!!! いまマリーって言ったわよね?!)

「失礼しても宜しいでしょうか?」

「……えぇ。大丈夫よ」

「失礼いたします」

こちらに一礼しながら部屋にはいってきたのはまだ若いメイドで栗色の髪に緑色の瞳をしている。

(栗色に緑色の瞳、この人はきっと……)

私は先ほど私のことをマリー王太子妃と呼んだことからこのメイドの名前を推測する。

「よく眠れましたか?」

「ええ……レイザ、ぐっすり眠れたわ」

「それは良かったです。では早速着替えをお手伝いさせて頂きますね」

(名前あってた!!)

私はあまりの嬉しさにレイザを見ながら飛び跳ねると、思わずレイザに抱きついた。

「嬉しいっ! 本物のレイザに会えるなんて」

「はぁ。あの……王太子妃殿下? 本物というのは?」

「ううん、なんでもないっ。こうなったら早く着替えて会いに行かなきゃ」

私の言葉にレイザがふふっと笑う。

「そんなに急がなくとも大丈夫ですよ。庭園で本を読んで待っているからとライネル殿下からのご伝言です」

「きゃああああっ、ライネル殿下ってことは本当に私、妻なのね」

「えぇっと……ライネル殿下とマリー妃殿下がご結婚なされてまもなく三か月ですが……?」

「あ、そうね! このシチュエーション間違いないわ」

「あの……どこか具合でも?」

「全然っ! むしろ絶好調よ」

(だって、これで社畜生活の辛さも忘れてロマファンの世界を堪能できるんだから!!)

私はレイザにドレスを着せてもらうと、すぐに庭園に向かった。