私はふわふわのベッドの心地よさと僅かに鼻を掠めるバラの匂いに瞼を開けた。

「ひぇっ?!」

私はすぐに素っ頓狂な声を上げる。

何故なら周りを見渡せば豪華なアンティークの家具がならび、美しい螺旋模様が彫られている猫足のテーブルには色とりどりの花が生けてある。

(い、家じゃない……っ!?)

「ここどこっ?!」

私は転がり落ちるようにベッドから飛び出すと、窓から外を眺める。

「うわぁ……」

そこには野球場何個分かわからないくらいの庭園が広がっており、映画でしかみたことがないような噴水が目の前に見える。どうやらここがとても広い宮殿のような場所だと言うことがわかった。

(もしも……ここが宮殿だとしたら……)

考えを巡らせながら、ふいに私は自らの服装に視線をおとして目を見開いた。

「ええっ! こ、これナイトドレスとかいうやつ……」

私が来ていたのは着古したスウェットの上下ではなくレースがあしらわれた上品なナイトドレスだった。

(じゃあ間違いなく、ここは……?!)

私の脳裏に確信としてあることが過ぎったとき、扉からノックの音が聞こえてくる。

──コンコンコンッ

「マリー王太子妃殿下、ドレスの準備が整いました」