秋風が心地よい季節、学園は一大イベントの文化祭で賑わっていた。
教室は装飾で華やかに彩られ、生徒たちは準備に追われながらも期待に胸を膨らませている。

真央はどこか落ち着かない気持ちで会場を見渡していた。
律は相変わらずクラスの人気者で、みんなの視線はいつも律に集まっている。

「お前、本当に目立ちすぎだよな…」

真央は心の中でそうつぶやきながらも、どこか律が羨ましくもあった。

午後のステージイベント、「王子様投票」の発表が始まった。
生徒たちの間でひそかに盛り上がっていたこの企画で、律は堂々の一位を獲得した。

「次は、王子様の発表です!」

司会者の声に会場がどよめく中、律は照れ隠しのように微笑んでいた。

しかし、その表情は一瞬で真剣に変わる。

「で、でも…俺が王子様って言われても、正直ピンとこねぇけど」

そんな律が、突然大声で叫んだ。

「俺の一番のお姫様は、真央だ!」

会場が一瞬、静まり返る。

周囲のクラスメイトや他の生徒たちの視線が一斉に二人に向けられた。

カメラのフラッシュが一斉に焚かれ、ざわめきが広がる。

しかし律の視線はただ一人、真央の瞳だけを捉えていた。

真央はまさに目が点になり、頬が真っ赤に染まった。

「俺が守りたいのは、真央だけだから」

律の低くて力強い声が、真央の心に直接響いた。

控室に戻った律は真央の様子を気にして近づく。

「驚いたか?」

真央は照れ隠しでうつむきながらも、こっそりと頷いた。

「だって、こんなにみんなの前で言うなんて…恥ずかしいよ」

律は笑いながらも真剣な眼差しで言った。

「だからこそ言いたかった。お前には特別な存在でいてほしいんだ」

真央の胸はドキドキと高鳴り、律の言葉の重さを感じていた。

これまでの遠慮や不安が少しずつ溶けていくのを、真央は実感した。

文化祭の熱気とともに、二人の関係もまた新たな一歩を踏み出したのだった。