朝の空気はひんやりとしていて、まだどこか静かな校門をくぐると、真央は無意識に肩をすくめて歩いていた。
昨日の夜、見るはずのなかった夢を見てしまったからだ。

夢の中で、律が真央の目をじっと見て、静かに言った。
「ごめん、俺はもうお前のこと好きじゃない」

その言葉が胸に刺さり、真央は目を覚ましたとき、心がぎゅっと締め付けられた。
夢だと分かっていても、その冷たい言葉は現実のように重かった。

教室に入ると、律の方からいつもの明るい笑顔で話しかけてくる。
「おはよう、真央」

だが、真央は無意識に少し距離を取り、声も小さく、そっけなく答えた。
「おはよう」

律は不思議そうに眉をひそめた。
「どうしたんだよ、今日はなんか元気ないな」

真央は言葉を選びながらも、正直に答えた。
「…昨日、変な夢を見て。律にフラれる夢」

律の表情が一瞬曇ったが、すぐに優しい目になった。
「そんな夢、見なくていいんだよ。俺はお前のこと、ずっと好きだし、夢中なんだから」

その言葉に、真央の胸はふっと軽くなった。

放課後、二人は校庭のベンチに座っていた。

律が真央の手をそっと握りながら言う。
「お前のこと嫌いになる夢なんて、見たくないよ。だから、変な夢に怯えて距離を取るな」

真央は照れくさそうに顔を赤くして、少しだけ笑った。
「ありがとう、律。私、やっぱり…律のこと、好きだ」

律も笑顔で答えた。
「俺もだよ、真央」

夢と現実のすれ違いを乗り越えて、二人の絆はさらに強くなったのだった。